バリ/ウブッド通信/128号/祈り

バリ/ウブッド通信/128

<祈り>


バリヒンドゥ教の儀式は一年中カレンダーに記されています。そしてバリの人達は毎日祈りと供養の日々を過ごします。「祈り」には惨事が起こってからその霊や事象を祈る祈りと、惨事が起こらないように日々から祈り、供養する事で「惨事の予防」をする祈りがあります。物事は起こってからでは処理、処置するしかできませんが、予防は起こらないようにするもので、日常的にも自然の、宇宙の尊重の元に、暦を信じてそのタイミングで予防するのです。一般的に満月の前後と新月の前後には「カジャンクリオン」と言う日があり、人はその日、神に大地に家の周りにお供えと供養をします。夜は外出を控え意識をアラートにします。日本的に言うと「大仏滅」的な日で人は不吉な事が起こると信じています。また悪霊の存在を信じているので、その為の供養、祈りも欠かしません。医学的にも宗教的にも信仰的にも予防が必要なのです。日々の生活の中に沢山の災難予防儀式があり、起こって当たり前と言う心情で生活をしているので、悪霊のやってくる海には頻繁に祈りを捧げます。毎日300万人の人たちが花を、線香を炊いて朝夕家の周りや村のお寺にお供えを捧げます。「死」は当然くるもので、その時が来てもちゃんと供養と浄化をする事で処理されていきます。


火葬、埋葬儀もお祭りのように、悲しむ事よりも祝うかのようでもあります。神に召された身体は埋葬の前に家の中庭で家族、親戚が集まり、生まれたときのように裸にして聖水で身体を洗い、僧侶の読経の中淡々と死の儀式が進められます。洗浄された身体には白い布が巻かれ皆が花を供えてお墓まで行進が始まります。竹の担架にバナナの葉で巻かれた屍は村の若者によって墓までパレードで道では車も人も止まり、三叉路では何回か屍を回転してまさにダンジリ祭りのように笑顔を浮かべて墓地に向かうのです。既に村人によって掘られた人の丈の深さの墓穴は箱のようにきれいに掘られています。そこに屍を埋葬してバナナの葉と遺品を添えてみんなで一握りの土をかぶせていきます。竹の節をくりぬいた棒を屍の足下にに埋めて霊抜きの竹を地上に出します。そして終わると家でみんなが集まって食事をしたりして集まるのです。葬儀屋さんもないので、全ての儀式の準備と進行は村人達でやっていきます。全ての儀式は村人全員で行うのでバリ人は多忙な儀式の日々を過ごすのです。


仕事よりも何よりもこの儀式が優先するのです。まさに祈りの為に生活があるようなもので、日々日常の中に覚悟を培って行くようにも見えます。




0 件のコメント:

コメントを投稿